健康一口メモNo276
「おいしく楽しく食べるためのチーム医療」
〜摂食・嚥下（えんげ）リハビリテーション〜

千木良デンタルクリニック 副院長　千木良あき子 先生

　健康な方々には実感がわかないと思いますが、「口からうまく食べられない状態」は、病状を訴えられない認知症高齢者や心身障がい者では珍しいことではありません。私は30年弱摂食・嚥下リハビリテーション（むせる、のみ込めない、噛めないなど、食べる機能の障がいのリハビリ） に関わり、施設や病院、支援学校などを訪問してきました。そのような施設では細心の注意をはらって食事を提供しています。例えば、「30度倒した姿勢を保ち、とろみのある食事を決められたスプーンを使い、適切なペースと量を守って口に入れる」などです。食べるためのリハビリでは、医科・歯科・栄養科・リハビリ科など多くの職種がチームになってこそ、患者さんの「健康な口の形・食べる動き・おいしく食べられると思う心」の回復に対応することができます。勝手に入れ歯を外せば形が整わず食べにくくなります。また、量やペース、食形態を誤れば窒息の危険性が高まり、口の中が不衛生では誤嚥性肺炎を引き起こします。障がいを持って生まれても、認知症になっても「形・動き・心」のサポートを受け、口からおいしく食べ続けたいものです。
　そのためにも、地域の摂食・嚥下リハビリでは、家族・スタッフの気づきや、医療・教育・介護・福祉の連携が大切です。

休日当番医（内科・外科・歯科）　6月2日〜6月30日