健康一口メモNo313
「知っていますか?」 非骨傷性脊髄損傷
七ヶ宿町国民健康保険診療所 所長 白井 雄 先生
「70歳代の男性です。飲酒後に転倒してから手足がしびれて力が入らず動けないとのことです。収容をお願いします」
夜当番をしているときにときどきある話です。
こういったエピソードはまずほとんどが「脊髄損傷」というけがです。額や顔にぶつけた痕や傷を伴っていることもあります。ぶつけた衝撃で首に力が加わり、中の脊髄がダメージを受けます。
「脊髄損傷」と聞くと、交通事故や転落などの大きなけがで背骨が折れたりずれたりして起こるものと思う方が多いかもしれません。確かに若い人ならそのようなケースが多いでしょう。しかし、高齢者では、加齢で背骨が変形することがあり、転倒など軽微な外力で骨が折れなくても簡単に脊髄損傷が生じやすくなります。このような損傷が高齢化に伴って増加し続けており、日本で発生する脊髄損傷の約70%を占めます。一度傷ついた脊髄は元には戻りませんから、麻痺などの後遺症が高い確率で残ります。
「ちょっと転んだだけ…」が思わぬ重症となり得ます。高齢者の方、特に飲酒後に酩酊状態で運ばれる方の割合が非常に多い印象を受けます。本人はもちろん、見守るご家族を含め、くれぐれもご注意ください。
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